正則行列と正規行列(ムーア・ペンローズ逆行列, エルミート行列, ユニタリー行列)
N×Nの正方行列: について考える。
1. 正則行列
以下の命題は同値である。
※ を満たす写像 を、 次行列 に対応する1次変換とする。
- 行列 は正則行列である。
- 行列 に対して、 を満たす逆行列 が存在する
- 行列 に対して、行列式 である。
- 行列 に対して、 である。
- 行列 に対して、すべての固有値が ではない。
- 行列 に対して、連立1次方程式「」が唯一解をもつ。
- 行列 に対して、連立1次方程式「」の解は のみ。
- 行列 に対して、 の列ベクトル は一次独立。
- 行列 に対して、は 「全単射」である。
- 行列 に対して、は をみたす。
- 行列 に対して、は をみたす。
2. ムーア・ペンローズ逆行列
以下の性質(1)〜(4)を満たす行列を、「行列に対するムーア・ペンローズ逆行列」という。
(1)
(2)
(3)
(4)
ある行列に対して、(1)を満たす行列は複数あり、これを「一般逆行列」という。
ある行列に対して、(1)〜(4)を満たす行列はただ1つに定まり、これを「ムーア・ペンローズ逆行列」という。
また、 と はエルミート行列である。
3. 正規行列
以下の命題は同値である。
- 行列 は正規行列である。
- 行列 に対して、 が成り立つ。
- 行列 に対して、 は対角化可能である。
※ 随伴行列
一般に、行列 の随伴行列は、の「転置行列」を各成分において「複素共軛(実部はそのままで虚部の符号を反転する)」したものとして定義される。
なお、 が複素行列である場合、以下の等式が成り立つ。
さらに、 が実行列である場合、以下の等式が成り立つ。
4. エルミート行列とユニタリー行列(複素行列への拡張)
N×Nの複素正方行列: に対して、以下の呼び名が定義される。
- 行列 が「対称行列」である。
- 行列 が「直交行列」である。
- 行列 が「エルミート行列」である。
- 行列 が「ユニタリー行列」である。
ここで、「対称行列」「直交行列」「エルミート行列」「ユニタリー行列」はいずれも正規行列であり、対角化可能となる。
エルミート行列は、対称位置にある成分が互いに複素共役になっている。