閃 き

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正則行列と正規行列(ムーア・ペンローズ逆行列, エルミート行列, ユニタリー行列)

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/2/2f/Linear_subspaces_with_shading.svg/1200px-Linear_subspaces_with_shading.svg.png


N×Nの正方行列:  {\bf A}=\left(
    \begin{array}{cccc}
      a_{11} & a_{12} & \ldots & a_{1N} \\
      a_{21} & a_{22} & \ldots & a_{2N} \\
      \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
      a_{N1} & a_{N2} & \ldots & a_{NN}
    \end{array}
  \right) について考える。


1. 正則行列


以下の命題は同値である。

 f_{A}({\bf x})={\bf Ax} を満たす写像  f_{A}:{{\mathbb{R}}^{N}}~{\to}~{{\mathbb{R}}^{N}}を、 \mathrm{N} 次行列  {\bf A}に対応する1次変換とする。

  • 行列 {\bf A} に対して、  {\bf A}{\bf A^{-1}}~=~{\bf I} を満たす逆行列  {\bf A^{-1}}が存在する
  • 行列 {\bf A} に対して、行列式  |{\bf A}|~{\neq}~0 である。
  • 行列 {\bf A} に対して、 rank({\bf A})~=~{\mathrm{N}} である。
  • 行列 {\bf A} に対して、すべての固有値 0 ではない。
  • 行列 {\bf A} に対して、連立1次方程式「 {\bf Ax}={\bf b}」が唯一解をもつ。
  • 行列 {\bf A} に対して、連立1次方程式「 {\bf Ax}={\bf 0}」の解は  {\bf x}~=~{\bf 0} のみ。
  • 行列 {\bf A} に対して、 {\bf A} の列ベクトル  ({\bf a_{1}},~{\bf a_{2}},~{\cdots},~{\bf a_{N}}) は一次独立。
  • 行列 {\bf A} に対して、 f_{A}は 「全単射」である。
  • 行列 {\bf A} に対して、 f_{A} Imf_{A}={\mathbb{R}}^{N}をみたす。
  • 行列 {\bf A} に対して、 f_{A} Kerf_{A}=\{ {\bf 0} \}をみたす。

2. ムーア・ペンローズ逆行列


以下の性質(1)〜(4)を満たす行列 {\bf A^{+}}を、「行列 \bf Aに対するムーア・ペンローズ逆行列」という。

(1) {\bf A}{\bf A^{+}}{\bf A}~=~{\bf A}

(2) {\bf A^{+}}{\bf A}{\bf A^{+}}~=~{\bf A^{+}}

(3) {({{\bf A^{+}}{\bf A}})}^{\mathrm{T}}~=~{\bf A^{+}}{\bf A}

(4) {({{\bf A}{\bf A^{+}}})}^{\mathrm{T}}~=~{\bf A}{\bf A^{+}}


ある行列 \bf Aに対して、(1)を満たす行列 \bf A^{+}は複数あり、これを「一般逆行列」という。
ある行列 \bf Aに対して、(1)〜(4)を満たす行列 \bf A^{+}はただ1つに定まり、これを「ムーア・ペンローズ逆行列」という。

また、 {{\bf A^{+}}{\bf A}} {{\bf A}{\bf A^{+}}}はエルミート行列である。

3. 正規行列

以下の命題は同値である。

  • 行列 {\bf A} は正規行列である。
  • 行列 {\bf A} に対して、  {\bf A^{\mathrm{*}}}{\bf A}={\bf A}{\bf A^{\mathrm{*}}}が成り立つ。
  • 行列 {\bf A} に対して、 {\bf A} は対角化可能である。


※ 随伴行列 {\bf A}^{*}

一般に、行列 {\bf A} の随伴行列 {\bf A}^{*}は、 {\bf A}の「転置行列」を各成分において「複素共軛(実部はそのままで虚部の符号を反転する)」したものとして定義される。

なお、 {\bf A} が複素行列である場合、以下の等式が成り立つ。

    {\bf A}^{*}=\overline{{\bf A}^{-1}}

さらに、 {\bf A} が実行列である場合、以下の等式が成り立つ。

    {\bf A}^{*}={\bf A}^{-1}


4. エルミート行列とユニタリー行列(複素行列への拡張)

N×Nの複素正方行列:  {\bf A}に対して、以下の呼び名が定義される。

  1. 行列 {\bf A} が「対称行列」である。     ~{\Leftrightarrow}~~~{\bf A}={\bf A^{\mathrm{T}}}
  2. 行列 {\bf A} が「直交行列」である。     ~{\Leftrightarrow}~~~{\bf A}{\bf A^{\mathrm{T}}}={\bf I}
  3. 行列 {\bf A} が「エルミート行列」である。  ~{\Leftrightarrow}~~~{\bf A}={\bf A^{\mathrm{*}}}
  4. 行列 {\bf A} が「ユニタリー行列」である。  ~{\Leftrightarrow}~~~{\bf A}{\bf A^{\mathrm{*}}}={\bf I}


ここで、「対称行列」「直交行列」「エルミート行列」「ユニタリー行列」はいずれも正規行列であり、対角化可能となる。
エルミート行列は、対称位置にある成分が互いに複素共役になっている。

https://mathwords.net/wp-content/uploads/2016/09/erumiito-300x163.png

5. まとめ


◯「逆行列」  (→正方行列である前提を拡張すると...) 「ムーア・ペンローズ逆行列

◯「対称行列」 (→実行列である前提を拡張すると...)  「エルミート行列」
 
◯「直交行列」 (→実行列である前提を拡張すると...)  「ユニタリー行列」